お前の申し立ては却下だ!
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着衣のマハ |
この前の日曜日は娘が部活オフ日だったので家族揃って上野国立西洋美術館に行ってゴヤ展を観てきたのだ。
国立だけに、中学生以下無料ってのがナイスだぜ。
俺としちゃ、ゴヤはそんなに好きでも嫌いでもないのだが、カミさんがチケットを・・・どうしたんだっけ?貰ったんだっけ?
ってことで、行くことになった。
『本物』の絵ってのは、ただそれだけでインパクトあるもんだしね。
首都高の料金制度が変わったので、上野まで以前より安く行けるようになった。
あ、いや、待てよ。変更前はETC休日割引があったから、、、あんまり変わらないかな? ちょい安くなったくらいか。
さてとゴヤ展。
ゴヤさんが生きた時代は18世紀から19世紀。
お国はスペイン。
王立のタペストリー工場の下絵師から画家としてのキャリアをスタートし、40歳で国王お抱え画家となり、その後宮廷画家になった頃には病気で聴力を失い、69歳の頃には40歳以上年下の彼女が居て、78歳でフランスに亡命、82歳で人生の幕引きと、そんな画家。
まずはタペストリーの下絵として描かれた、かなり優雅に脳天気な絵から始まった。
この頃はまだ戦争もなく平和な時代。
王宮を飾るタペストリーの下絵としての突き抜けた脳天気さ、いや、優雅さは若きゴヤの野心の表れだろうか?
小さい絵、大きい絵、スケッチやら何やら・・・
宮廷画家になった頃の国王カルロス4世の肖像画はなかなかのインパクトだった。
本やデジタルデータで見ても、本物の迫力は分らない。
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カルロス4世 |
等身大ほどのデカい絵で、着てる服のビロードの質感が凄い。
肩から斜めに掛けてるのはタスキじゃないよ。勲章だね。なんてんだっけ?こういうの。
これ薄~い生地なんだろうな。絹かな? モアレが出てる様まで描かれてる。
ボタンや勲章のキラキラな部分のキラキラ感も凄い。表情や目の感じも凄い。
この絵が納品された時の王様のリアクションを想像せずにはいられない。
「で、余の肖像画はできたのか?」
「はい、陛下。こちらでございます」 バサっ
「おぉ~~~、なんと!素晴らしいぞ!お前、パネー!」
「ハハァ。勿体無きお言葉にございます」
その他の作品ももあれこれ。 こりゃ足場組まなきゃ描けないよなってくらいデカい絵なんかも見て廻り、
そして、冒頭に貼った、有名な『着衣のマハ』の絵。
これと対のヌードバージョンもあるのだが、それは日本に来なかったようだ。
絵の持つ迫力って凄いね。
昔々、その画家が実際に描いた絵を目の当たりに観るのって、得も言えぬものがある。
本物の絵の、筆のタッチなんか見て、その画家の魂を感じたりしないか?
そういう意味じゃ、ゴッホなんて魂炸裂してるけどね。(大好きさ)
版画やその下絵もかなりの点数が展示されていた。
こっちはみんな、アーティストとしての個人的な作品制作だったんだろうな。
世の中の不条理や堕落した聖職者や権力者への批判や皮肉を表現した作品が多い。
結構ダークファンタジーだったり、かなりホラーだったり。
『我が子を食らうサトゥルヌス』なんて、かなりおどろおどろしい。
フランスのナポレオン軍の侵攻を受けて、上へ下への大騒ぎな時代になったりもあって、ジャーナリズム的な視点での絵(かなりキツい)があったり、戦争批判であったり。
科学が人類の未来を明るくするんだねって風潮が勢いづき始めた時代に、それに水を差すキリスト教会への批判的な絵ってのも興味深かった。
キリスト教会や穢れた聖職者を批判はするけど、それでも宗教画も描いてるんだから、信仰は持ってたんだろうな。
野心的に脳天気な絵を描いていた時代から、円熟した優雅な絵を描く傍らで色んなものへの批判を作品にしたり、動乱の世の中を描いたり。
画家とその作品自体がドラマだね~。
息子は絵が好きなもんで、「凄い」「わー」「おー」「さっきの絵と同じ靴」とかなんとかリアクションしていた。
娘は特にリアクションは無いものの、飽きる風でもなく最後まで一つずつ作品を見ていた。
『本物』を見て、何でもいいから感じたり、思ったりしてくらたらいいなと思うね。
息子はグッズ売り場でゴヤの作品の猫の絵がプリントされたクリアファイルをそこそこの値段で買った。
「こういうの持ってると、ゴヤ展行ったんだぜって感じでいいじゃん」
娘がクリアファイルの値段を聞いてコメントをした。
「高っ!ディズニーキャラクターのクリアファイルでさえ、その値段で3枚買えるわ」
価値観や経済観念って、同じ家で暮らしてるからって同じにはならんのさ。
美術館を出て食事。午後は晴れていれば上野動物園に行こうと思ったのだが、はっきりしない天気なのでアメ横をぷらっと冷やかしに。ま、浅めにね。
いや~、やっぱ楽しいな。アメ横。 一人でゆっくり廻りたいわ。
と、銀座に本店のあるバッグ屋さんのアメ横店が、開店してから26年目にして閉店となり、
閉店セールのフィナーレとして、最後の20分間は全部3千円セールなるものをやっていて、
まさにその最後の20分間に出くわした。
ちょいと覗いてみた。
ふむふむ・・・
ン万円の本革バッグや財布が3千円で投げ売りされている。
まぁでも、微妙に処分品? 黙ってても売れるものは本店や別の店に行ってるにチゲーねえ。
すると息子、「とーちゃん、うち帰ったら返すからお金出して」
「一体何を買うんだ?」
「これ」 と、息子が指さしたのは、定価2万円の値札が付いたオーストリッチの財布。
いや、ちょっと待て。
確かに2万円が3千円なら安いしお買い得だ。
モノは本物だし、悪い買い物じゃない。
けど、お前、小4だぞ。
小4でオーストリッチの財布って、何だバカヤロー!だろ。
2万円が3千円ってことじゃなく、単に3千円の気に入った財布があったら買うか?
小4が、「これ気に入った!」って3千円の財布? このドアホー!
「お前の申し立ては却下だ!」
一方娘は、26年お店やってて、その最後の20分に行き当たった巡り合わせに「パネー」と感心していた。
本物を観る目と、それに対する価値観のバランスって、、、難しく面白い。
主観的なものだけに。
やっぱり本物は、いいよね~
返信削除作者の思いが、感じられるような…
週末、大好きなモディリアーニ観にいこうかな~
Eiichi~! コメントどーもありがとー!
返信削除> 作者の思いが、感じられるような…
そうそう。まさに。ね。
引きで見ても、近くで見ても、それぞれ来るもんがあるよねー。
> 週末、大好きなモディリアーニ観にいこうかな~
モディリアーニが大好きとね?
なんかEiichiらしい感じがするわ。
例えばエゴン・シーレも好きだったりして?いや、勝手な想像だけどね。