2011年1月10日月曜日

『美丘』by 石田衣良

愛あればこそ

去年、テレビで『美丘』ってドラマをやっていた。
家族が観ていたので、途中の回からだが、俺もテキトーに観ていた。
発症後は急速に病状が悪化し、やがて死を迎えてしまう「とある脳の病気」を抱えた主人公「美丘」の物語だ。

ドラマとしてどうかっつーと、ちと微妙な感じだったな。俺には。
なんだろ? な~んか違うなぁ~って感じだったんだな。

ある回のオープニングだかエンディングのクレジットで、このドラマの原作が石田衣良だと知った。
なぬ!石田衣良だ~あ?

違う。
いや、違わないんだろうけど、かなり意外だ。
でも違う。違うって、、、何だろ?

ノリが違う。
心意気が違う。

石田衣良と言えば、『池袋ウエストゲートパーク』シリーズだ。
数年前に友人に勧められて読んでみて、見事にハマった。
あ、これもTVドラマ化された作品だ。
ドラマは宮藤官九郎が脚本なので、原作のノリを踏まえつつも宮藤官九郎テイストが濃いものになっているようだ。(チラっとしか観たことない)

小説の『池袋ウエストゲートパーク』シリーズは面白い。
か~な~り面白い。
シリーズ通して、一冊が短編~中編程度の数編の物語で構成されている。(”短編集”ではない)
なのでトントントーンとテンポ良く読める。

文章のテンポも軽快だ。
読みやすいのに軽くはない。とは言え重い訳でもない。なにしろ面白い。
世相を反映しつつ、アウトローや裏社会やドロップアウトや社会不適合者や暴力や風俗やドラッグやなんやかんや描いているけど、読後感は爽やかだし、余韻として残るのは「愛」かな。 ま、俺はね。

主人公の、”池袋のトラブルシューター”マコト が、クラシック音楽好きってのがニクい。
出てくる曲がこれまたなかなかニクい。
「ヨハン・セバスチャン・バッハのオルガン曲集」を「J.S.B.のキーボード曲集」なんちゃってるのもニクい。
モーツァルトの『ディベルティメント』を「どこかの金持ちのパーティーのために天才が書き飛ばした名曲」なんて表現してるのもニクいっていうか笑った。

文庫では<8>まで出てる。とりあえず、<8>まで全部面白い。
ハードカバーの最新は? <10>ってか! よくまぁネタが続くもんだ。


おぉ~~~~っとっとっとっと!
話を『美丘』に戻そう。

家族で買い物に出たある日、本屋に寄ったところ、娘が『美丘』の文庫本を発見。
「これ、読みたい!とーちゃん!買ってぇ~!」
「アホー!買ってぇ~!って言われて買うかボケぇ~!」
と言いつつ、俺が読みたくなって買ってしまった。
読み終わったら娘に貸すってことで。

で、読んでみた。
前半分は通勤時に読んだが、ヤバそうなので残りは家で読んだ。
案の定、ヤバかった。
最後は・・・家族が寝静まった静かな我が家のリビングで、一人さめざめと泣いた。

原作では主人公の病気はクロイツフェルトヤコブ病だった。
例の狂牛病と言われたBSEの人間版だ。

やっぱ原作は石田衣良のノリだった。
単なるお涙頂戴悲劇だと思って読むのを敬遠してるなら、大間違いだぜ。
美丘の生き様、美丘の彼氏である「僕」の視線・心意気、そして二人の「約束」。
自分らしさとは。自分が自分でなくなるとは。生きるとは。死とは。

俺は前にもこのブログに書いたけども、自分が自分として存在することと生と死との意味ってのは、なかなか簡単でない哲学的とも言える命題だったりして、この作品はそんなのも絡めて、かなり来る。

大きな大きな愛がなきゃできないことをするんだな、二人は。
愛なんだよ。あれは。あぁ、泣ける。

ついでに、ネタバレにならないように注意しつつ言わせて貰えば、
プロローグで語られるあることが、エンディングに見事に絶妙に効いて来て、
曖昧な表現にとどめを刺すように明快さを与えているんだな。
それでもう大泣きだよ、俺は。うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ。


さて、まだ娘には貸してないんだけども、
まぁ若い男女の話だけに、SEX絡みの記述もバンバン出てきててねぇ。
幸いその行いの具体的な描写はないんだけども、するだのしただのしようだのもう一回だの・・・

まだ小学生なんだけど、何せ思春期差し掛かりのおませさんだし、
ま、良い機会だと思って、読ませてみようと思っているのだ。
愛あればこそ・・・ってのを読み取ってくれたら良いなぁ。

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