2011年4月26日火曜日

交換日記とストラディヴァリウス(前篇)

吹奏楽部への道

我が娘ももう中学生。 中学生ともなれば家族と出かけるなんて恥ずかしいとか鬱陶しいとか感じ出す年頃。
小学生高学年くらいですでに始まってる子も居るだろう。
自我の確立やら自己主張やら親との意見の対立やら小憎たらしい物言いやら、あれやこれや、、、第二次性徴、いわゆる思春期ってやつだな。
親にとっては鬱陶しいかもしれないが、意識上の親離れ子離れの儀式として歓迎するべきなんだろう。

ってことで俺は、娘がいつ反抗的な態度に出たり小憎たらしい事を言ったりしても対応できるように、常に心の中では半身で構えているのだが、幸か不幸か、娘はまだ「反抗期」的なノリではない。

小学校高学年くらいからチョイチョイ挑発的発言はあったが、そのたびにきっちり対応(ムカつく)して来たのは、娘としても親との距離感を測る材料にはなっていたのかもしれない。

そんな我が娘、反抗的どころか、近頃仕事で忙しく帰りが終電か終電近くになる俺のために、毎日手紙を書いてくれる。
「とーちゃん、帰って来ても誰もおかえり言ってくれないんだね・・・」なんつーて書き始めたそうだ。泣かせるじゃないか。
カミさん、昔は俺の帰りを待ってくれてたが、今は娘のお弁当作りやその他あれこれで忙しく、「待ってなくていいぜハニー」っつって先に寝ることになったのさ。

さてお手紙。
最初は紙切れだったが、かーちゃんのアドバイスでノートになった。
中学生になる娘と交換日記をすることになるとは夢にも思わなんだ。
いや、交換日記っつっても、俺は娘の書いたページに直接リアクションコメントを書きこむだけだ。
「担任、男の先生は初めて! 関西の人だから関西弁丸出しなんだよ」
「そうなのか。じゃあ先生がボケたらちゃんとツッコめよ。もしくはノリツッコミな」
ってな按配。

先週はずっと中学での部活の仮入部の話。
娘は吹奏楽部で心を決めているため、連日吹奏楽部に顔を出していた。
今日は楽器をいくつやらせて貰ったとか、アンサンブルを聞かせて貰ったとか。A.サックスかっけーとか。

先輩にオーボイストが一人だけ居て、吹かせてもらったらしい。
「オーボエあったまきた!全然音出せなかった。もう二度と吹かない!」
アハハハ。そうか。あったまきたか。
俺はオーボエ大好き。フォルムが美しいし見た目もかっこいいし音もしっとり艶やかで切なげで綺麗だ。
オーボエはあまりメジャーな楽器じゃないかもしれない。誰もが知ってる代表的な曲っつーと、、、チャイコフスキーの『白鳥の湖』だな。
カーペンターズの曲もちょいちょいオーボエが使われてる。 『Super Star』『Love Look At Two Of Us』『青春の光と影』などなど。
実は俺、オーボエ好きになったきっかけはカーペンターズ。

さて娘、後日、オーボエに再挑戦したそうだ。
「音出たよー!いいねーOb。楽しいー!いっぱい吹いた」
「そっかー。オーボエはイイよなー」

まだ正式入部してからの楽器は決定してないが、オーボエが筆頭候補に躍り出た。
とりえあえずチューバ以外すべての楽器を試してみたとのことだ。


さて、中学校から部活説明会なるものの通知。
カミさんが行って話を聞いてきた。

吹奏楽部。
練習は毎日。朝練もある。
土曜日も練習。
演奏会やコンクールの前は日曜日も練習。というかほとんど。
年間の休みはほぼ盆暮れ正月くらい
って感じだ。
もう家族みんなで出かけるなんてほとんでできなくなるな。

そして、なんと、
ここに来て初めて明かされる衝撃の事実。

一部の楽器は学校にありますが、それら以外は各自で購入していただきます。
高価な買い物になりますので、3年間休まず続けられる人のみ入部してください。

なんと!!! 楽器、貸し出しじゃないのか!!!

学校御用達の楽器店の案内パンフレットも配られた。

いや、そんなこともあるかもしれないって覚悟はしてたけどね。
でも幾らくらいするものなのか、さっぱり見当が付かない。
ヴァイオリンなんかは初心者用が5万円くらいからある。
管楽器のことは良く分からんが、エントリーモデルなら7~8万からせいぜい10万くらいかな・・・と思っていた。
カミさんもだいたい同様の線で考えてたらしい。

楽器店のパンフレットには各楽器、数種ずつメーカー・モデル・定価・売値が書いてある。
部員の多くは第一希望の楽器の担当にはなれないという話を聞きつつも、とりあえずオーボエの価格をチェックしてみた。
一番安いやつは・・・YAMAHA製 定価441,000円か。 え? 何? 44万だ~あ? 何をぉ~~!
腰抜けるっちゅーの! 目ん玉飛び出て戻らねーっつーの! 脳波真っ直ぐになるっつーの!いや渦巻くっつーの! 瞳孔開きっ放しだ、コノヤロー!老眼も進行したっつーの! もう笑うぞ!ワハハハハハハハ!

ただ、学校と契約してる店なので売値はかなり安くなる。 同じ品番でネットで調べた最安値より安かった。
それでも飛び出た目ん玉戻らない。はいそうですかと簡単に出せる金額じゃない。

その他、フルートもクラリネットもサックスもトランペットもホルンもトロンボーンもユーフォニアムもチューバもコンバスもみんな結構~~~~なお値段だ。
ちなみに、チューバ、コンバス、バスーンなどのデカモノを除いた場合、一番高いのがオーボエだった。ブルジョワの楽器だなぁおい。

自購入と聞かされて、その場に居たお母さん方みんなびっくり。
教室内、動揺走りまくり。ただちに健康被害におよぶほどのレベルだ。

居合わせた、あるお母さんの悲痛な叫び。
ウチの子は剣道部に入るって言ってたんですよ。それが吹奏楽部入るって言い出して、
それで今日来てみたら楽器を買えって、、、もう何が何だか、、、寝耳に水です!

カミさん笑った。カミさんからその話聞いた俺も笑った。確かに寝耳に水だけど、先生、そんなこと訴えられても困るよなぁ。
ま、せいぜい10万なんて思って俺は、寝口に黒蜜って気分だよ。「あ・・・甘い!」(by Y.Nouchi)
よ~く考えたら、プラスチック製のバスリコーダーの定価が39,000円なのに、木製で金属いっぱいのオーボエが10万で買える訳がない!


翌朝娘と話した。
「お前、これさ、はいそうですかってポンと出せる金額じゃないぞ」
「・・・」
「あ、そうだ。俺のバスリコーダー使えばイイじゃん」
「やだよーっ!」
「ハハハ!
でもお前さ、土日もほとんど休みなしになっちゃうんだぜ。ピアノも塾もで忙しくなるし、家族でお出掛けなんてのももう出来なくなるぞ。あ、そうだ。映画SP革命編も観に行けないじゃん。夏の家族旅行ももう行けないし、、、そういうの全部承知の上で、それでも吹奏楽部入りたいのか?」
「うん!!!!!」
娘が返答までに掛けた時間は0.000372秒ほどだ。

気に入った! この「うん!!!!!」気に入った。
それならこっちも応援してやろうじゃないかって気になるよ。
心配しなくても、すでに彼女の中では親離れのプロセスが始まってたんだな。

「そしたらさ、楽器買ったら、家族みんな向こう三年間ご飯のおかずは納豆だけな」
「え゛~~~~!それはやだーーー!」 息子「納豆大好きー!」
「じゃあ月に一度の贅沢で、キムチも食べさせてやるよ」
「向こう五年間お小遣いなしでもいいですから、それはやめてください」



そして後日、晴れて娘は吹奏楽部に正式入部。それが先週木曜日のことだ。
その2日後の土曜日、新入部員の担当楽器が決まる。

果たして娘は第一希望のオーボエ担当になれたのだろうか?
第二希望のアルトサックスか?
第三希望のフルートか?
はたまた「やっぱあれもイイな」と言い出したホルンだろうか?


中篇へつづく!!!

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