腕時計を巡るボカスカ

俺の間合いで行くから

腕時計に対するスタンスって人それぞれ色々だ。
色々でイイ。誰にもそのそれぞれのスタンスを否定したり批判したりする権利はない。

友人らの間でも様々だ。
ただ、この歳になると流石に、それなりに大人な（つまり高級ブランド）時計をしている人も多い。
時計好きな人は何本も持っていて気分やT.P.O.で使い分けたりもする。イカしてるねー！

男が時計に持つ感情って、多くの「男の子」が根源的に持つ、メカや計器への憧憬の延長なんじゃないか？
と思ったりもしたりして。カッコイイねー！


で、この俺。
腕時計の高級ブランドや超高級ブランドの、価値や存在意義なんかは全然認めている。
質感、デザイン、存在感、職人の心意気、粋・・・なんかから、唸っちゃうこともある。

の・だ・が、、、「いや、カッケーけど、そんだけ金あったら他に使うわ」ってのが俺のスタンス。

じゃあ、そのン十万円の時計がン万円で売られてたら買うのか？っつったら、買わない。
そういう問題じゃないのだ。それはやっぱりン十万円、ン百万円、ン千万円じゃなきゃいけないの。

デザイン・質感・価格が俺の中で絶妙に折り合うポイントは、最低レベルじゃないが、そう高くはない。
ハーレーにはン百万円出せても、腕時計には十万円すら出せない。ン百万円、ン千万円の価値を認めていてもだ。
価値観ってのは面白いものだねぇ～。

そう。俺のタチの悪さは、高級・超高級ブランド腕時計を価格を含めて認めちゃってるところだね。
「そんなの認めねー！ ここら辺りのレベルが順当なんでぇ！」って方が害が無くてイイ。


なんでこんな話をしてるのかっつうと・・・


このブログのコメンテーターでお馴染み２氏、川上とあっかんのブログの話。

川上のちょっと前のトピックに、亡き父が生前失くしてしまった高級スイス時計が見つかり、それを形見として（そして亡き父からのメッセージとして）受け取ったという話があった。

あっかんの最新トピックには、彼の父上が40年前に銀座審美堂（老舗の高級宝飾・時計店）で購入した、今では風防ガラスが一部がひび割れ革ベルトもくたびれている時計を譲り受けたという話。
（そうは言っても写真を見る限り、確固たる存在感と気品を漂わせる、とっても素敵なスイス時計だ）

どちらの話にも、俺は猛烈に感動してしまった。
ほんと、こういうのって凄～くイイなぁ～～～としみじみ思う。
女性の場合だと母からジュエリーを受け継ぐってノリだろうな。

そこには「譲り渡す・譲り受ける」ってこと以上に、色んなものが付随してくる訳さね。
そのモノにまつわる ”ストーリー” だったり、持ち主の半生だったり、思い（双方の）だったり、、、色々だ。

時計を受け取った川上が、時計と一緒に受け取ったあれこれとは？

ガラス直したりオーバーホールするよりゃ買った方が安いと言いつつも息子に手渡した、あっかんの父上の胸に去来したものは？

彼らの父の左手首（多分ね）で、息子の成長と共に、自分の半生と共に、時を 歴史を 刻んできたスイス時計だ。

あー、ヤバい。感動・・・涙・・・。
何しろ秋だろ？ 感覚も感情もセンシティブになってるのさ。


と、そんなこんなで、
やっぱ俺も「きちんとした大人の時計」を持つべきなんじゃないのか？・・・と思うに至ったって話なのだ。
受け継ぐチャンスには恵まれなかったが、受け継がせるチャンスがあるのだから活かしたい。


理想の時計としては、、、
永い間、一定数以上の人たちから一定水準以上の評価を受け続けている物で、
先々、息子に渡る時点でもそれを維持しているであろうと思われる信用力があり、
かつ、楽勝で買えるものではなく、ちょっと（あるいはかなり）無理しないと買えないもの
が望ましい。

「長期間の一定水準以上の評価の継続」や「信用力」ってのは、すなわちこれこそ「ブランド」ということだ。

ここではブランドへのこだわりは重要なのだ。 それこそが ”ストーリー” ともなるからね。
おっと、そんな、またまた、、、パテック・フィリップとかオーデマ・ピゲとかバセロン・コンスタンチンとかそんなレベルの話じゃないよ！
車買えちゃうじゃんかよ！ ヘタすりゃ家も買える！

んでもやっぱりスイス時計だ。
いや、セイコーでもイイんだけど、ここは一つスイス製ってことで、穏便に・・・（ま、これも俺的に・・・）

さらに条件として、デザインは完全に俺の趣味で選ぶ。
将来の息子の趣味なんざ知ったこっちゃねーやい！ガハハハハ！（完全にそれでイイーのだ！）


と、本屋で立ち読みした腕時計雑誌に、タイムリーにも「いつか子供にゆずる日のために」なんて記事が！
あぁ、そういう目的で高級腕時計買うのって、結構フツーにあることだったのね。
まったく思い至ってませんでしたわ。

で、その記事を読んでみた。
ふむふむ・・・そりゃそうだ・・・うんうん・・・いや、でも・・・
そしてその記事曰く、

「パテック･フィリップが最良でしょうね」

なぁ～にぃ～～～！ 俺に臓器売り飛ばせってーのか！！


実は俺、前から「イイなぁ～」と思っているスイス時計ブランドがあるにはあるのだ。
まぁ中堅どころってとこかな。
お値段も、まぁそこそこですわ。俺にとっては。
そう、俺にとっては清水の舞台から飛び降りる・・・だけじゃ足りず、さらに東大寺五重塔の天辺から片足バンジージャンプして、しかる後、大阪城の天守閣から人間大砲で射出されて琵琶湖に着水するくらいの勢いがないと買えない。

バンジージャンプやったことない人も、TVのバラエティ番組でタレントがやるところは見たことあるでしょ。
踏み切る前の躊躇・・・あの気持ちよ。

頼む、絶対に背中押さないでくれ。
その時になれば俺は俺の間合いで行くから。
頼むよ、ほんと。　誰も俺の背中、押さないでくれよぉ。

って、おいおい、家のローンも車のローンもハーレーのローンも終わってねーぞーぃ！


で、例えばの話、俺がこれを機に（ま、数年以内に）スイス製中堅ブランド腕時計を買ったとする。
で、そう、今から24年後くらいかね。
とっくの昔に巣立った息子が夫婦でウチに来たりする訳さ。正月かね。

「おめえももうイイ歳ぶっこいた大人なんだから、それなりにイイ時計したらどうでぇ」
「いや、いいよ、これで。 金もったいねーし」
「バッキャロめ、イイ物は人をイイ状態にするって俺の友達のかわ・・・」
「その話、もう10万回くらい聞いたよ！」
「あぁ、そうかい・・・ （ガサガサガサ・・・）おい、良かったらこれ使うか？」
「え！これとーちゃんのスイス製中堅ブランドの腕時計じゃん！ いいのかよ！？」
「あぁ、使うなら持って行きな」 （あくまでもサラっとね・・・）
「う・・・とうちゃん、、、これ、趣味じゃないから要らねーわ」
（なぬ！・・・い・今なんつーた？・・・）「何ぃ？ 要らねー・・・ぇ？」
「あぁ、要らねー」（ゴロンと横になりTVを観出す）
俺、ショックで廃人状態。ショウジョウバエがたかり出す。 カミさん蒼ざめて息子を諭す。
「あんた、これそこそこイイ時計なのよ。折角だから貰っておきなさいよ！」
「え～」（面倒臭そうに）「しょうがねえな・・・ヤフオクで幾ら付くかな？」
「なんだとぉ、テメー！コノヤロー！」ボカっ！
「痛ぇ！ なんだよ！そんなに大事ならやるなんて言うんじゃねーよ！」
「うるせー！」「ガオー！」
ボカスカボカスカ・・・バシッ！バシッ！ ガンガラガンガラ・・・
「やめてぇ～！」（←息子の嫁）
「まぁ、ゆっくり見物してなさいよ。あ、このテーブルどかしましょ。そっち持って」（←冷静なカミさん）
「こんちわー」「あー、やってるやってるー」（←娘夫婦も登場）
ガシャーン！ バリーン！ ドスッ！パカッ！ ドカーン！
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ハァ・ハァ・ハァ・ハァ・・・」
「ハァ・ハァ・ハァ・ハァ・・・」
「お前・・・、腕を上げたな」
「とーちゃん・・・、野獣だな」
「ウハハハハハハ」
「アハハハハハハハ」
「それじゃ、みんなでうなぎでも食いに行くか」（←意味不明）
「ワーイ！」「イイねー。あ、とーちゃん、今ので俺の腕時計壊れちゃったよ」
「そしたら、これ使うか？」
「うん。ありがとよ」
「ヤフオクで売ったらお前殺す」
「売らねーよ。とーちゃん死ぬまでは」
「コンニャロめ！」ボカっ！
「アハハハハハハハ」
「ウハハハハハハ」


いや・・・いくらなんでも24年後に息子とボカスカバトルは出来ないよなぁ・・・