2007年5月20日日曜日

5人で「ミニ・サイクル!」

今回はいつもに増して長文です(すごく)

- 献辞 -
この物語を、私の青春時代に彩りを添えてくれたNとKとYに捧げる
彼らと音信が途絶えてしまっていることが残念でならない・・・



前回、タンデムについて書いていて、中学時代のとある事件を思い出した。
ある意味ちょっとホラーな話だ。

ハーレーとはあまり と言うか ほとんど関係ないのだが、なぜかこのブログに書き留めておきたくなった。
一気呵成に書き上げてから数日に渡り校正を繰り返し、そしてこの前書きのようなものを書いている。

本文だが、読んで面白いものなのかどうかが判らない。
校正して読み返せば読み返すほど、さっぱり判らなくなってくるのだ。

少しは楽しんでいただけるものになっていれば良いのだが・・・


ハーレーと言うと一般的に良く思い描かれるのが、グイッと立ってから手前に引き絞られるハンドル。
あれは「エイプハンガー」という名前のハンドルバーなのだが、中学時代、俺達はエイプハンガーバーのチョッパーチャリに乗っていた。
おっと、いかん。記憶を捏造してしまった。
エイプハンガーチックな普通~のママチャリに乗っていた。
いや、当時はママチャリという言葉はなく、「ミニ・サイクル」だった。

あれは中3の春だったか初夏だったか・・・秋のような気もしないではないが、真夏や冬ではなかった。

このブログの他の記事にも出てきている”かっさん” の妹君がエレクトーンの発表会に出るということで、友人らで地元の中規模ホールに観に行くことになった。

当日、集結したのは5人。
スポーツ万能な”かっさん”、寝言が得意(はっきり喋る)なN、Nの天敵 ぽっちゃりなK、超賢いけど超ぶきっちょなY、そして俺。

いつも集まる時はチャリだったのだが、なぜかその時はNだけがチャリで、他は徒歩だった。

今思うと不思議だ。なぜNだけがチャリだったのか?
しかも、その為に、これから語る悲劇は起きてしまったのだ。
運命という奴だろうか? 巡り合わせ? カルマ? 業? まぁ何でも良いや。


かっさんの妹君はとてもエレクトーンが上手で(しかも愛らしく)、素晴らしい演奏だった。
妹君の後も何人かの演奏 - 素晴らしかったり、そうでもなかったり - を聴いていたのだが、なにせ10代前半の俺達だ。
集中力が続く訳もなく、会場内で遊び出した。
しかし、周りの迷惑を顧みるという感覚も辛うじて持ち合わせるほどには成長していたので、外に出て遊ぶことにした。

5人居るのにチャリは一台だ。おいおい、しかもピカピカの新車じゃないか!
さあどうする?
この状況を楽しまない手はないのではないか?
などと相談した訳でもないのだが、なんとなくその場の流れで、

『ミニサイクルで5人乗りに挑戦!』

のコーナーになった。

乗り方を考えるだけでも大騒ぎだ。
「Kは背低いからカゴだろ。」 かっさんが言う。
確かに背は低いが、ちょっと太っちょのK、ハンドル前のカゴにコアラのようにしがみつく。
なにせ『箸が転げても・・・』の年頃。これだけで箸2万本分の大爆笑だ。
そして、ハンドルとサドルの間、フレームに足を掛けて一人。
サドルに座って普通の体勢のこぎ手が一人。
荷台に座るのが一人。
荷台の突端に立つのが一人。

さあ行くぞ!
う・・・動かない。
一番後ろの奴は、最初ちょっと押してから飛び乗ることにした。
が、前に出るもバランスがとれず、すぐに倒れてしまう。

う~ん、うまく行かないなぁ・・・

ポジションを変えたり、交代したり、色々試してみる。
なかなか上手く行かない・・・
今度はお前があっちだ、俺がこっちだ、、、
白バイショーみたいに扇形はどうだ?
あーだこーだ、、、

そして、何度も失敗を繰り返した後、俺がサドルに座る組み合わせになった。
実は俺、バランス感覚にはいささかの自信がある。俄然張り切った。

「よ~っし行くぞー!」

5人目が後ろから押し、俺はバランスをキープしながら渾身の力でペダルを踏み込む。
良い感じだ! 5人目が飛び乗った。
Nのピカピカのママチャリ もとい ミニ・サイクルは、5人の中学生を乗せて、重々しくも荘厳に走り出した。

「おぉおお~~~スゲー!走ってるぞぉー!」

歓声と雄叫び。
全員が、例えようのない、神々しいまでの歓喜と興奮に包まれた。

どこまでも走って行ける気がした。
どこまででも走ってやるぜ
と思った刹那、得も言えぬ感覚に包まれた。
空から落ちるすんでのところで、天使にふわふわの雲で助けられたような、重く、優しい沈みこみ感。
直後にバランスを崩し、全員チャリから振り落とされ、チャリは敢え無く横たわる。

それでも全員、興奮のあまり大騒ぎ。
スゲーよ!スゲーよ!走ったよー!
ワーーーーー!

おそらくまともに走った距離は5メートルにも満たないだろう。
だが、この後、他の友人らに語る時には、これが7メートル、9メートル、13メートルとなって行く。
(なぜかしら奇数の方がそれっぽいのだ)

本当に感動的なひと時だった。

が・・・ あの得も言えぬ沈み込み感は一体なんだったんだろう?
俺は、俺達の足元に横たわる自転車を仔細に観察してみた。
そして、尋常ならざる事態に気付く。
これだったのか!

「おい、みんな! これ、タイヤひん曲がってんぞー」
俺が指さす後輪をみんなが一斉に見る。

「あー、ほんとだ!」「スゲー!」「えぇ~~~!」「おぉ~~」

大変なことになったぞ、、、

と、腹の底から笑いが込み上げてくる。
ブハハハハ
ウハハハハハハ
曲がってるよ、おい!
ギャハハハハハハハハハハ!
箸1億5千万本分の大爆笑だ。
タイヤは、中央の車軸の少し下の辺りで、綺麗に一直線に曲がっている。

とりえあずチャリを起こしてスタンドを掛けてみた。
通常であれば、自転車を真後ろから見ると、タイヤは縦に真っ直ぐの直線だ。
しかし、Nのミニサイクル。 真後ろから見ると、タイヤが7時ちょうどの時計の針の形なのだ。
この、真後ろから見た様が可笑しくて堪らない。なにせ7時ちょうどだ。
全員、見ちゃ笑い、見ちゃ笑い、、、箸4億7千万本分に増幅だ。

しかし、N、笑いながらも、「どうすんだよぉ、これ・・・」

そりゃまずいよな。親に知れたらただじゃ済まされない。

「N、大丈夫だ。任せとけ。」

言いながら俺は再びチャリを横たえた。
俺は当時から器用で鳴らしていたので、皆の期待はいやが上にも高る。
特に、超賢いが超ぶきっちょなYに至っては、羨望と憧憬を湛えた双眸で俺を見詰めている。

皆が祈り見詰める中、サバンナで猛獣を仕留めたハンターよろしく、おもむろにNのピカピカ新車チャリの上に立つ俺。

「こういう時はね、踏ん付けて蹴飛ばして直しちゃうんだよぉ!」

Nの了解も待たず、言うが早いか、ひん曲がったタイヤ目がけて渾身のストンピング。
「そりゃあ!」(ガシッ!)「うりゃあ!」(ガシッ!)「とぉりゃあ!」(グワッシッ!)
3度目のストンピングで変化が現れた。
なんと、スポークが外れ出したのだ。
ヤバいぞ、またもや笑いの発作・・・
全員同じ波長で盛り上がっているだけに、笑いの発作はたちどころに伝播した。
全員で爆笑ストンピングを繰り出し始める。

どんどんスポークが外れて行く。
外れるごとに爆笑レベルが上がっていく。箸60兆本分に達するか。
涙溢れて止まらない。
呼吸もままならない。
腹筋はねじ切れそうだ・・・。

とうとう一本残さず、すべてのスポークが綺麗に外れてしまった。
タイヤフレーム(リム)はひん曲がったままだ。

もう~ダメだ。
笑い声も立てられない程の狂おしい笑い発作。
「全部外れるまで、何蹴り続けてんだよ! ヒィ~~~ッヒッヒッヒ」
脳に酸素が行かない。意識失いそうだ。
箸レベルは2千兆本分を超えた。


少し落ち着いたところで、再びチャリを立ててみた。
タイヤフレームは、沢山のスポークによって車軸と繋がり、全体で車輪となっている。
このスポークがすべて無くなってしまうと言うことは、車軸とタイヤフレームは一切の接点を持たないことになる。
つまり、、、プラ~ンプランなのだ。
チャリの後部を持ち上げても、車軸がタイヤフレームの頂上に当たって持ち上げるまで、タイヤ(7時ちょうど)は地面に着いたままだ。

またもや発作・・・
「何、このチャリ」 (”何”じゃねえだろ!)
ヒャ~ッヒャッヒャッヒャヒャ
ヒィ~~~~ヒッヒッヒッヒ
勘弁してくれ~~~
ワァ~ッハッハッハッハ
箸、10の26乗本分の笑い波動だ。

だた、さすがにここに至ってNの笑顔は引き攣って来ている。
とりあえず皆で対応を協議。
盗まれたことにすりゃ良いじゃんか。
満場一致で可決成立。

N、早速公衆電話で自宅に連絡。
「もしもし、あのさぁ、Kに自転車貸したら盗まれちゃった」
Kはびっくり。 Nの右後方から叫ぶ。「俺かよっ!」
残り三人、涙しながら大笑い。


問題のチャリはどこかへ捨ててしまおうという話になった。証拠隠滅だ。
外れたスポークはすべて公園の植え込みの中に不法投棄。
後ろタイヤは車輪としての用をなしてない。
Nがハンドル持って自転車を押し、一人が荷台を掴んで持ち上げ、もう一人がタイヤを支えて、いかにも自転車を押して歩いているかのごとくに振る舞いつつ、捨て場所を探しに移動。

と、前方からチャリ警官がやってきた。
全員に緊張が走る。
チャリを支えてない二人も後輪サイドに身を寄せ、カバーに入る。
警官との距離が詰まる。
全員、前方を注視しつつも視界の端で警官の動静に注意を払う。
俺達の右側を
通り過ぎ・・・
警官は去っていった。
ふぅ~~~~~。
緊張状態から一気に弛緩したため、またもや笑い発作・・・


しばらく歩くと、小さな川に行き当たった。
川と言っても干上がる寸前のショボイ川だ。
その川に掛かる橋を渡りながら協議し、そこに捨てることに決定した。
周囲をくまなくチェック。
誰も居ない。
誰も見てない。
民家も見あたらない。

じゃ、行くか。

全員でチャリを持ち上げる。
持ち上げて投げ捨てるには二人で十分なのだが、全員でなければダメなのだ。
ダメと言うより、皆の気持ちは一つだ。
大いなる感動と歓喜と笑いを提供してくれたピカピカミニサイクルに、皆が手を伸ばす。
10本の腕に支えられ、ミニサイクルは高々と持ち上げられた。
もちろん、後輪のプラ~ンプランもしっかりホールドされている。

辺りに誰も居ないのに、ひそひそ声だ。
「じゃ、行くぞ・・・ いっせーのっ」
かすかな「せっ」と共にピカピカミニサイクルは俺達の手を離れ、美しい放物線を描きながら川に落ちて行く。

「ガシャッ!」

静かな夕刻、落下時の音は思いの他大きく響いた。
と言うより、俺達の心に、大き過ぎるくらい大きく響いたんだ。
俺達は一斉に走り出した。
誰も居ないし、誰も見てないし、民家もないけど、とにかく走った。
微かな罪悪感と、残虐性への畏れと、ミニサイクルへのすまなさと、歓喜と興奮の余韻と、達成感と、仲間との連帯感と、すべてがない交ぜになって、とにかく走る。走る。そして、走りながら笑った・・・。

近くの空き地に駆け込んだ。
「なんで逃げてんだー ギャハハハハハ」
涙流しながらひとしきり大笑いだ。

あー、笑い過ぎて腹が減った。
と、タイムリーにもそこに屋台の焼鳥屋が。
焼き鳥を買ってみんなで食べる。旨い。
タレが手についてべとべとのギトギトになった。
公園ではないので水道はない。

「こういう時はね、土のアルカリ成分で落とすんだよぉ」

言いつつ俺は地面の土を手にまぶし、タレのべとべとを落として行く。

「タイケー、そういう事良く知ってるなぁ」

みんな感心しつつ俺に倣って同じようにするが、当然のことながら手は土で汚れまくりだ。
俺以外の四人は「なんだかなぁ~・・・」って目で自分の両手を見つめていた。
俺は、みんなより一回多く笑った。

6 件のコメント:

  1. いやー
    とっくりと読ませていただきました
    でも
    なんで
    自転車捨てたんでしょうね
    別にその辺に置いてきちゃえばいいのにね
    笑いました
    スポークが外れて行く度に
    N氏の顔が変わっていくのが
    わかりました
    大笑いしながらも
    鳥肌たっちゃって
    なんだか映画「スタンドバイミー」
    観てるみたいで泣けちゃいましたよ
    まじで・・・

    それにしても
    タイケの文才に脱帽です
    終わり方が小説みたいで
    “匂い”がしていいっす
    たまんないっす・・・

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  2. 川上ぃ~! 毎度どもどもです。

    長いのをとっくり読んでくれてありがとう。
    楽しんでいただけたようで、何よりです。

    こりゃまた「スタンド・バイ・ミー」とは、恐れ多いことに御座りまする~。
    とは言いつつ、俺の中の「スタンド・バイ・ミー」的エピソード ではありますね。確実に。

    いや、文才なんか全然どってことねっす。
    けど、”匂い”を感じてくれたのは、超~~~嬉しいっす。

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  3. ども!加瀬です。
    いや~、笑った笑った。
    正に号泣しながら箸10の26乗本分笑いました。

    確かになんでNだけチャリだったのだろう?
    で、なぜ、5人でチャリに乗ろうなんて考えるんだ?
    ハンドル前のカゴにコアラのようにしがみつくかね?
    普通タイヤを曲げるか?(だから普通じゃねえっての)
    スポークが外れるって・・・・もうダメだぁ!ヒィーーーー!

    この現場に幸福にも居合わせることが出来たことを、今更ながら深く感謝しています。

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  4. おぉ~!かっさ~ん! コメントどもありがとっすー。

    そんなに笑いましたか。
    それはそれは何より何より。
    嬉しうございます。

    ほんと、川上も「なんで」って書いてるけど、「何で?」な事の積み重ねが奇跡を生んだった感じだよね。
    すべてが必然だったんだねぇ。(な訳ねーだろ!)

    ほんと、感謝っすねー。

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  5. これ読んでから、どうしても
    5人で「ミニ・サイクル」
    のお題が頭から離れず、
    笑いのどつぼにはまっています。
    ・・・いまだに~
    どうしてくれんのよぉ~

    返信削除
  6. おぉ~~~!タナバターさんじゃございませんか!
    コメントありがとうございます。
    大変嬉しうございます。

    どつぼにはまってますか。
    それはそれは何より。書き手としては幸甚の至りでございます。

    どうしてくれんのよぉっつってもねぇ・・・どうしましょ?
    とりあえず、箸をかき集めてジャラ~ンって転がしてみるってのは?
    え?意味わかんないって? こりゃどうもすんません。あはははは

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