トリセツ

世の中には二種類の人間が居る
取説を読む奴と読まない奴だ
- by Taikei Davidson -

先日のことだ。
終電一本前の電車で地元駅まで帰りついたところ、雨がジャブジャブ降っていた。
一応折りたたみ傘は持ってはいるが、、、、

家まではアップダウンが多いものの歩けない距離じゃない。でも、大雨の中を歩くのはキツい。
ってことで、カミさんが車で駅まで迎えに来てくれることになった。

ランデブーポイント、大きなひさしの下で雨を避けて待つ。
と、カミさんからフラッシュ通信。
車のイグニッションが回らないと言う。

何ですとぉ～！？

ウチの車、たまにイグニッションがロックされたようになって回らなくなることがある。
俺はその状態を3秒で解除できるのだが、その一連の動作が脊椎反射レベルにまで達しているため、詳細が思い出せないし、言葉で説明できない。

「ハンドル回してみ」
「回したけど、ダメ。イグニッションは回らない」
「う～ん・・・」
「う～ん・・・」

他に原因があるのかも・・・

あれしてみ、、、これしてみ、、、
ことごとく効き目なし。
雨脚は強まり、怒りを湛えているかのような変拍子のリズムを刻む。

「取説見てみるから、もうちょっと待ってて」
「あいよ。よろしくー」

取説に望みを掛けよう。
というか、カミさんが取説読める種族で何よりだ。
何しろカミさん、神から「取説の伝道師」の称号を授かってるのですか？ってくらい取説のオーソリティなのだ。
どんな取説でも長年の愛読書のようにサラサラっと読み下す。
トリセツ・マエストロ
取説博士
トリセツクイーン
ゴッド・オブ・トリセーツ
取説隊長！ （隊長って・・・）

おっと、携帯ブルりりり・・・
「もしもし、どうした？」
「イグニッション回ったよー」
「おー！やったー！何だったんだ？」
「イグニッションをひねりながらハンドルをゆっくり回してください って書いてあって、それで回った。」
「おー、そうか。それじゃよろしくー」

おー！そうだ！ 俺がやる時もイグニッションひねりながらハンドルを回していた。
それが思い出せれば早かったのだが・・・
それより、そんなこともちゃ～んと取説に書いてあり、なにより、それをちゃ～んと発見するカミさんのトリセツ・マエストロっぷりったらどうだい？

カミさんが取説を読む種族でなかったらどうなっていたことやら。
ま、俺の場合だと、、、
「それじゃちょっと今から俺が行って見てやるぜ」と、歩いて帰宅。
車に乗り込み、あの要領で・・・ お、回った！
「やったー！」
「やったー！」
「じゃ、行こうか？」
「うん！・・・え？・・・」
「あ？・・・・」

カミさんが取説を読む種族であったことに深～く感謝したさ。


俺も一応取説は読める種族だ。カミさんほど積極的には読まないが。

まずは取説なしでことに当たるし、大体のことはそれでどうにかなる。
が、取説を見ないとどうしても分らない、または知り得ない、高次な機能があったりするので、そういう時は見る。

取説を読まない種族は、「取説読まなきゃ使えないようなモノを作るのは罪悪だ」くらいに思っているのかもしれない。
それも一理あるにはあるが、
この際、悪魔と取り引きして取説読んでみたら、
もっと便利に、もっと楽しく素敵なことが見つかるかもよ～