2011年10月3日月曜日

義父の死と娘のピアノ発表会(前篇)

じーちゃんの野望

義父の死と娘のピアノ発表会。2つのテーマで別々にトピックを書くことも考えたのだが、この先ずっとこのこの2つはペアで語られて行くんだろうと思い、一緒に書くことにした。


先週末、翌日に娘のピアノ発表会を控えた金曜日の夜半前、カミさんの父上が亡くなった。
床に就くもまだ眠ってなかった娘にカミさんが事情を話し、車で出かける。
途中で義母をピックアップ。
心の準備はできていても、いざとなると動揺してしまうものなんだろう。
「脚が震えちゃって・・・」 覚束ない足取りで車に乗り込んだ。


病院に到着。
病室へ向かう。
義父は静かに穏やかに「眠って」いた。
看護師による30分ごとの巡視の合間に息を引き取ったとのこと。
まさに眠るように。 苦しむことなく逝けたのは何よりだろう。

義父の、妻と娘との挨拶の間、俺は一歩引いてそれを見ていた。
人の死というものは厳かなものだよな。生と同じくらい。



義父を葬儀社に委ね、帰路に就いたのが午前2時過ぎ。
疲れて腹減ったので24時間営業のマクドナルドに寄ることに。
すると義母、「こんな洒落たとこ来たことないからどうしたらいいかわかんないよー」とソワソワ。
俺もカミさんもサラっとオーダーを終え、義母を促す。
「お母さん、どれにする?」
パネルやメニューシートを見るも、ソワソワドキドキで判断できないらしい。
「ハムとエビじゃないやつ!」
メニューを絞り込むには条件が薄過ぎる。
「ばーちゃん、じゃあ、牛と鳥と魚とどれがいい?」と俺。
「魚!」(← ちょっと会津訛りで)
すかさず「フィレオフィッシュ一つ」とカミさんがオーダー。
「飲み物は?」
義母、パネルを指差し「あれが良いなぁ・・・」
「あと、カフェ・ラテね」 全オーダー完了。

ちと可愛かった。(ついでにカフェラテにストローを挿すのに難儀してたのも含めて)


帰宅し、シャワー浴びて就寝したのが午前4時30分。
カミさんは2時間ほど。俺は3時間寝て、翌日に備える。





カミさんは朝から葬儀社での打ち合わせがあるため一人で車で出動。気をつけてな。

娘のピアノ発表会は午後2時開演だが、午前中からリハーサルがある。
当初、ウチの車で娘と娘の幼馴染で一緒にピアノを習っているミミちゃん(仮名)を送り届けるはずだったのだが、ミミちゃんのママにお願いして車を出して貰い、ウチの娘も乗せて行って貰うことに。

「すみません。よろしくお願いします」
娘を送り出し、後は息子とテキトーに昼食摂ってから本番前に開場に行くだけなので、一寝入りしようかと思うも、なんやかんやとやることあって寝られず。

早めに出て会場近辺で昼食を摂ることにした。

会場近辺に着くのがちょうどお昼くらいになる感じで家を出て、ケータイでカミさんに電話を入れてみた。
もう打ち合わせも終わってると踏んでいたのだが、電話に出ず。
数分後にカミさんより電話。 まだ打ち合わせは終わってないとのこと。
「じゃあ、これからそっち向かうから合流して一緒に昼飯食べよう」 ということに。

実は、なんと!
ピアノ発表会の会場の、道路挟んで2つ隣のビルが葬儀場のビルなのだ。
発表会は前回まで別の会場だったのに。
「じーちゃん、きっと孫のピアノが聞きたくてあのタイミングで逝ったんだな」 と皆に語られる。



息子とバスで向かい、葬儀場に到着。
部屋に通されると、打ち合わせはまだ続いていた。
義母の他、長女であるカミさんのお姉さんとそのお嬢さん、義父の弟夫妻も来ていて一通り挨拶。
俺の立場でどういうノリで挨拶をしたら良いのか良く判らず、ソワソワしながらテキトーに済ます。(ハハハ)

息子、じーちゃんと対面。
額をしきりに触っていた。
そういや俺も、ガキの頃、爺さんが亡くなった時に触った感触は鮮烈だったな。
固くて、冷たくて・・・
そんな経験も必要だよな・・・って、おいおい、お前!触り過ぎじゃい!


打ち合わせを終え、発表会のホールが入っているビルの地下で、みんなで昼食。
昼食を終えると、ちょうどピアノ発表会開場時間の少し前。
時間配分が見事過ぎて怖いくらいだ。
そしてそのままみんなで発表会会場へ。
「じーちゃんが孫のためにみんなを呼んだんだね」 と皆に語られる。

「じーちゃん、こっそり連れて来ちゃえば良かったね」
「そーだよそーだよ。両脇から抱えて歩けば、少し足元危ない老人くらいに思われるだけだし」
「でも席に座っても真っ直ぐだぜ。カチーンって」
「アハハハ。怖えーよ。ピアノ弾けなくなっちゃうよ」

などと、冗談も出るくらい落ち着き、和やかにはなっている。
ネタとしては不謹慎だけど、実はこういうのって必要なんだよな。



この日の朝、起きたての娘に事情を説明した際、最後に、

「だからお前、じーちゃんに聞こえるように、想いを届けるように弾くんだぜ」

そんなクサいセリフに、年頃の娘は引くかなと思いきや、神妙な顔でしっかり頷いていた。

ただ、あの少し歪み気味の笑顔の意味が、涙を堪えてのことなのか、ドン引きを隠すためなのか・・・それを確認してしまうと、どっちの意味にしても俺がヤバそうだったので、すぐにその場を去った。

人の死ってのは、厳かなもんだよな。



さぁ、発表会だ。 みんなで、きっとじーちゃんも一緒に、会場へ。



義父の死と娘のピアノ発表会(中篇)へつづく・・・

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