2007年8月1日水曜日

エイドリアン

プールで良かった

壁を蹴って、彼女は泳ぎ出した。
拙い泳ぎだが、彼女なりに精一杯泳いでいる。
ゴールがあるからではなく
父に褒められようとしてでもない。
自らの希望に向けて、彼女は泳ぐ。

苦しかったら足着いても良いんだぞ。

3メートルラインを超えた。
彼女にしてみれば上出来だ。

4メートルラインに達しようとしている。
拙い泳ぎが、さらに乱れる。
苦しいのか。
それでもまだ頑張るのか。

5メートルラインに立つ父の元へ
彼女は小さな気迫を爛々と輝かせつつ泳ぐ。

もうすぐだぞ。俺の手が見えているか?・・・
俺の胸に熱い何かが湧き出し、鼻梁を伝い、目の上に上って来た・・・



先の日曜日、子供ら連れて三人でプールへ行った。
カミさんは直射日光に当たると溶けてしまうので、お留守番なのだ。(どんなだよ?!)

本牧市民プールという市営のプール。
プール中央に大きな噴水があり、一時間ごとに大噴射する以外、とりたててどってことない公営プールだ。

こういうところは、大抵、家族連れと中学生以下が主な利用者層となるものだ。
だが、なぜかこのプール、20代とおぼしきカップルおよび男女グループも散見される。

プールサイドでイチャ付いてる20代とおぼしきカップルが居た。
男が女の水着かプロポーションについてチャチャ入れし、女が抗議の掌底を食らわすといった、ありがちな光景だ。
見るともなしに見ていたところ、男が地雷を踏んでしまったらしい。
彼女の見事なミドルキックが一閃! 男の脇腹に決まり、男は悶絶しつつ半笑いでくずおれた。
仲良き事は美しき哉・・・


さて、
小学3年の我が娘、体育は嫌いじゃないのだが泳げない。
水の中に潜れない。
去年はちょびっとだけ泳げたはずなのだが、どうも何かの恐怖心に囚われているらしく、思い切れないようなのだ。

しかし、本人は泳げるようになりたいと思っている。
ならば手助けしてやれるかな?

午前中は遊ぶだけ遊んだ。
子供らは浮き輪でラッケンロー!だ。

午後は娘相手に水泳教室。

水に顔付けてみよっか。 できることはできるが、ずっとはできない。
首までしゃがもう。 できる。
口まで沈んで。 できる。
頭を前に倒して鼻まで行こう。 行ける。
頭真っ直ぐなまま、目の下まで。 駄目だ。
耳が怖いのか?・・・
じゃ、指で耳塞いで、目の下まで。 一応できた。
耳塞いで頭まで潜ろうか?  ・・・できない。
大丈夫、水入ってもそのうち抜けるし、チト気持ち悪いかも知れないけど、どってことねって・・・

そうこうしているうちに息子が吠え出した。
そりゃ面白くないわなぁ。ねーちゃんがとーちゃん独り占めじゃ。
もう駄目かと思いきや、この日の息子の行動が、珍しく娘にとって良い方向へ働いた。

「じゃあ、俺もやってみよっと」
5歳の息子、浮き輪を打っちゃっていきなり水中へザバーン!
サッッッバーと泳ぎ出したのだ。

「ップハー! とーちゃん!泳げたよっ!」
「なんだ、オメー!すっげーな、おい! ラッケンローーー!」

俺も娘もびっくりだ。
息子、時々水を吸ってゲホゲホするも、そのうち潜水までしだした。

娘、弟に負けてられないとばかり、気合が入る。
耳を塞いで・・・潜れたじゃん!
耳を塞がずに・・・う~ん、、、あっ、、、う~・・・潜れた!
おーイェ~イ!グッジョブ!ハラショー!出来たじゃんか!
娘も嬉しそうだ。

三人で水中ジャンケンなどをして、とにかく潜ることに慣れる。

んじゃ、泳いでみれ。

まだ若干の恐怖心があるのか、焦って無駄な力を使っているのか、1メートル程で足を着いてしまう。
「OK,OK,落ち着いて行こう。 力抜いて。 じゃ、次、ここまで。」
ちょっとだけ距離を伸ばしたところをゴールにしてチャレンジ。
ちょっとずつ、ちょっとずつ、3メートル近くまで距離を伸ばす。
泳ぎ方や姿勢のアドバイス。 お、また伸びた。
休憩や遊びを挟みながら、ちょっとずつ。ちょっとずつ。

甚だ親バカ発言だが、我が娘の、恐怖心に打ち勝とうする姿勢やその後の根性たるや瞠目に値する。
俺の頭の中では映画「ロッキー」のテーマが鳴りっ放しだ。

すぐ横では、息子がイルカの芸の如く、水中でスクリューのように回っている。
なんなんだ?お前・・・凄いなぁ。おっとこ前だなぁ。

そろそろ帰る時間に近付いて来た。
最後は一気に5メートルラインに挑戦しよう。
途中足着いても良いからここまで泳いでこーい!

で、冒頭の一幕だ。

・・・・
もうすぐだぞ。俺の手が見えているか?・・・
見るからにもう限界近くに来ている。
相当苦しそうだ。
両手を前に差し伸べたい衝動を生涯かつてない程の自制心で抑え込む俺。
もう・・・駄目か?・・・
と、次の瞬間、彼女の手が俺の手を掴んだ!

ォオ~!やったぞー!ラッケンローーーー!!!

娘、ハァハァ言いながらも晴れやかな表情。
俺、目頭がヤベっ・・・ プールで良かった・・・

俺の頭の中では「ロッキー」のテーマの後半の盛り上がり部分が鳴っていた。
俺は心の中で、思い切り叫んだ。
「エイドリア~ン!」 (わっかるかな~)

10 件のコメント:

  1. 読んでいるこっちが目頭どころじゃなく
    涙出ちゃったよ、グスン
    ロッキーのテーマも頭の中鳴り響いちゃってるよ・・・泪

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  2. 川上ぃ~! 毎度どもです~。

    泣かしちゃいましたか。
    こりゃ、どうもっす。
    ロッキーのテーマは飛び道具でしたかね?
    って、本当に鳴ってたんで、しゃあないんすけどね。
    てか、俺、書きながらも涙出ちゃってんの。
    あはは、すんません。親バカです。

    でも「ロッキー」は名作だよねぇ。
    エイドリア~~~~ン!

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  3. 親子愛に感動!
    夏休み親子水泳教室素晴らしい!
    父と息子なら、ロッキーのテーマ最高!
    父と娘なら、ロッキーのテーマだと、
    たくましすぎて将来が~?

    私はゴールできっと「ブラボー」と
    叫んだ事でしょう。

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  4. まさおぉ~! コメントどもです~!

    > 父と娘なら、ロッキーのテーマだと、
    > たくましすぎて将来が~?

    んじゃ、父と娘ってえと、ペーパームーン?
    って、詐欺師じゃん

    > 私はゴールできっと「ブラボー」と
    > 叫んだ事でしょう。

    イェ~イ!
    ブラボー!ハラショー!トレビア~ン!ラッケンロー!!

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  5. パチパチパチッ!娘さんに拍手っ!!
    川上さん同様、ワタシも泣きました。
    気持ちよい涙。
    この「がんばる心」って清く気高いね。
    父ちゃんも素敵だけど、息子さんも
    いいスパイスになってるよね。
    しかし、タイケーさんの息子さん 
    何者だ!?
    泳いだことなかったんだよねぇ?
    数時間後にはイルカか息子かってくらいに
    水中で回ってるのはびっくり。

    うちの主人の兄の子供、つまり甥っ子くんが
    毎年夏休みに我が家に遊びに来るんですが
    この甥っ子君が メッチャ臆病でねぇ・・・
    内弁慶で困ってます。こんなんで
    いつかイジメにあったらと思うと
    心配で。。。
    犬も猫も虫も怖がります。
    遊園地も乗れるものはメリーゴーランドくらい。ちなみに小学校三年生です。
    学校でもあまり友達もいないみたい。
    自分の子じゃないから教育には口出せないけど 我が家にきて 少し強くなって帰って
    ほしいのよね。ちなみに1人では当然泊まれないから両親も一緒に泊まりにきます。
    泊まっている3日間の間に何かできること
    ないかなぁ?
    あ、コメントのはずが 相談になっちゃった。お知恵がありましたらお貸しくだせぇ。

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  6. ネコキックさ~ん! コメントどもです~!

    > 川上さん同様、ワタシも泣きました。
    これはこれは。どもども。

    > この「がんばる心」って清く気高いね。
    そうだねー。良い表現だね、清く気高い。まさにそうだね。

    > しかし、タイケーさんの息子さん 
    > 何者だ!?
    ブハハ。そーなのよー。びっくりなのよー。もう、どんだけぇ~っ!


    ふむふむ・・・甥っ子君ね。う~む・・・
    心配するだけじゃなく、ちょっとでも良い方向へ誘導できないかって具体的にアクションしようとするところが、ネコキックさんらしいね。 素晴らしい。

    彼、ビビりで内弁慶ってことは、一人っ子でちょっと甘やかされ気味なのかな?
    たとえば、挨拶はきちんとできるのかな?
    おはよう、こんにちは、さようなら、いただきます、ごちそうさま、おやすみなさい、ありがとう、ごめんなさい、ラッケンロー、、、
    もし、できてなければ、するまで笑顔で促し続けた方が良いね。いちいち。
    他所に行くと自分ちとは違うってのをしっかり意識させるのは大事だよね。

    ビビりって点は、そんなに心配要らないかもよ。
    それより、自分ちと他所(学校も含む)は違うってのをしっかり認識して、それに対応したり、折り合ったりってのが大事なのに、そこにちょっと問題があったりしてないかな?
    その反動で内弁慶レベルに拍車が掛ったりしてたりして?
    つまり、ストレス。

    だから、何かが出来るようになるってことより、まぁ何かを通してでも良いんだけど、ウチに来たらウチのルールに従ってね と。
    ルールの上で、みんなが気持ち良く過せるんだね と。ま、そんなところを笑顔で示してあげるのが良いのかな・・・
    甥とは言え、他所の子って叱り難いでしょ。
    叱るよりも、「あ~、そんなんされて、悲しいわぁ~」「へこむわぁ~」って方が、言い易いし、しかも伝わり易いですね。

    あとは、難しいこと考えないで、思いっきり遊ぶことじゃないかな。大人もみんな童心に帰って。
    遊んであげるんじゃなく、一緒に遊ぶの。同じ土俵で。相手がズルしたら、ガキみたいに怒るの。「おめー、ズルすんなよー」って。
    そういうフリをするんじゃなく、本気でそうすんの。

    ビビりなとこは、それでちょっとは改善されることもあるかも。遊びを通してね。関係無さそうだけど、意外に関係あったりするのね。
    かつ、ストレスの発散にもなるし、両親以外の人達とのふれあいを通して、良い方向に向うんではないかなぁ?

    全然具体的じゃなくてごめんねー。
    しかも、憶測だけで物言ってま~す。

    ま、「ビビり克服」とかテーマ掲げて何かするってのは逆効果かなぁ~と思うです。

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  7. あ~・・・・
    すんごい勉強になります。
    そうです。考えてみるとヤツは
    挨拶を自分からしたことない。。。
    こちらが挨拶すれば 返してくるけど・・・
    そして、なにか周りにしてもらったとき
    ありがとうという言葉がない・・・
    あ、お察しの通り 一人っ子でかなり
    周りに甘やかされていると思います。
    ダンナと私にはなついていて
    私たちを「ぼくの友達」と言います。
    なかでもダンナは本気でヤツと遊ぶから
    ダンナのことが本当に好きみたい。
    私はどこか 「あそんでやってる」というのが
    あって それを彼も感じてるのかも。
    そこがダンナと私との差なのかなー・・・

    ダンナのことを彼は「M(ダンナの名前)は厳しい。だからぼくはがんばる」って言ったことがあるんだよねぇ・・・
    それって本気でぶつかってることが
    彼なりにわかるんだよね、きっと。
    そんなところもあって
    かわいくて ついなんとか
    ビビリをなおして挑戦する心を植えつけようと躍起になっちゃうときが私たちにはある。
    それ、逆効果なんだね。

    彼は本当にちょっとしたことでしおれちゃって打たれ弱いというか ちょっと何かあると
    泣くしグズッっちゃうんだよね。
    やさしい子なんだけどね・・・・

    そう。人の目をみて基本的なあいさつを
    するよう 導いてみよう。

    本当に心当たりがあることばかりです!
    そうだよね、難しく考えないで
    家と他所では違うこと、他所では他所のルールがあって それに上手に折り合っていくことを覚えてくれれば・・・
     
    >叱るよりも、「あ~、そんなんされて、悲
    >しいわぁ~」「へこむわぁ~」って方が、
    >言い易いし、しかも伝わり易いですね。

    うーん!
    この言い方、愛があるなー・・
    彼は強く言われると泣いていじけるので
    こういう言い方のほうがいいのかもな。

    子供は子供なりに ストレスがあるんですねー。。。

    ホント、勉強になります。
    また、相談に乗ってくださいな。

    ついこの間、タイケーさんのコメントの中で
    「子育ては 気持ちの上では
    刺し違えるつもりでやってる」という言葉が
    私とダンナに響いていて
    つい 相談してしまったけど
    大きな収穫がありました。
    ありがとーーー!
    「タイケー夫婦の子育て奮闘記」でも出版してほしいものだわ。

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  8. いや~、どもども。恐縮です。
    偉そうな御託並べちゃって、まぁ、どんだけ立派な親なのよって感じだけど、現場はグダグダです。はい。ウハハハハ。
    ウチの子らも、他所の人に対しては挨拶忘れがちで、そのたび促してるし。
    ま、根気良くっすね。

    > ダンナのことを彼は「M(ダンナの名前)は厳しい。だからぼくはがんばる」って言ったことがあるんだよねぇ・・・
    これは見込みあるね!
    彼もがんばりたいんだよ。

    > それって本気でぶつかってることが
    > 彼なりにわかるんだよね、きっと。
    まさに、その通りだと思います。


    ビビりってのは、生存本能の為すとこであって、自然なことなのよね。
    ウチの子らもビビりだよ。特に上の娘。
    でも遊びなんかを通して、物事への興味とか好奇心ってのが高くなっていくと、これに反比例するようにビビり度が下がるのね。

    とか言いながら、俺、「こんなことでビビってんじゃねー!」とか言ってるけどね。
    言うけど、無理に克服させようとはしないっすわ。
    「あー、これって本当はビビることじゃないんだなぁ」ってことだけ伝わればOK。
    ま、状況によって突き放したり抱きしめたり・・・
    後は野となれ山となれ・・・


    > 子供は子供なりに ストレスがあるんですねー。。。
    あるねー。
    ストレスって悪いことばかりじゃないんだけどね。
    で、彼のように、外でのストレスを内弁慶って形で内に発露してるのはまだ全然良い方で、内のストレスを外で発露するパターンはタチが悪い。
    親の知らないところでとんでもねーことになってたりするのよん。
    (ハッ!ウチは大丈夫かな?・・・)


    > 刺し違えるつもりでやってる」という言葉が

    あはは。俺、本当にええ格好しいで偉そうな奴だなぁ。ウハハハ。
    でも、本当にそうなんだけどね。刺し違える覚悟。
    本当に子供を愛してるなら、それくらいの覚悟は持つべきだと俺は思ってるのね。他は知らないよ。俺は。
    必要なら子供らに嫌われることも厭わない。
    なぜなら愛してるから。
    子供に嫌われたくないってのは、完全に自己愛なんだよね。


    > 大きな収穫がありました。
    > ありがとーーー!
    あいや、どういたしましてで御座りまする。
    俺ごときの勝手な御託で得るものがあったなら、何よりでございます。
    ま、参考程度にね。あとは現場の状況で臨機応変にって感じで。


    てか、俺、本当に偉そうだな。我ながら天晴れだ。
    どんだけぇ~!

    返信削除
  9. 甥っ子にどう接したらいいか
    全くわからなくなってたんだけど・・・
    うん、みえてきたよーー


    >ビビりってのは、生存本能の為すとこであって、自然なことなのよね。

    あぁ・・そっかぁーー!!
    納得。最初のコメント返信のところで
    タイケーさんが ビビリはあんまり心配
    する必要ないかも。。って書いてくれたけど
    どうして心配ないのか 恥ずかしながら
    わかりませんでした。
    なるほど、克服させるのではなく
    「ビビることないよ」くらいのことを
    伝えればいいのよね。

    >発露してるのはまだ全然良い方で、内のストレスを外で発露するパターンはタチが悪い。

    これ、私だよ!!!
    外弁慶(こんな言葉ないか)で
    家ではいい子してて 学校ではクラスを牛耳ってた。たまにやりすぎて 親呼ばれちゃって お転婆してたことがバレて 大惨事に
    なるの。親、メッチャ厳しくて 鬼こわかったから・・・いやぁ。。屈折してたねー


    甥っ子は素直に感情を身内に出す分
    いいんだろうな!

    あー ホント 甥っ子が泊まりに来る前に
    思いがけず子育て術を伝授してもらい
    助かりましたぁ!
    また、報告しますわ!
    ありがとです!

    返信削除
  10. > うん、みえてきたよーー
    本当、何よりっす。

    > 「ビビることないよ」くらいのことを伝えればいいのよね。

    そうそう。
    ま、ガキの頃のビビりは、食わず嫌いと同列くらいのノリかな。


    > これ、私だよ!!!
    あ、そうだったんだ。タチ悪かったのかー。
    大惨事か。ウハハ。
    あ、笑っちゃ失礼だね。
    でもその屈折の一幕も、今思えばアリっちゃアリでしょ?
    それも「表現」だしね。

    > ありがとです!
    とんでもねっす。どういたしましてです。

    ま、気楽に真剣に楽しく愉快に頑固で柔軟にでさね。
    拠り所は、、、「愛」だね。

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